小悪魔の肩甲骨

整骨院に通っている。
猫背な僕は子供の頃から肩こりがひどく、小学2年生になる頃には教室のイスの背もたれで肩甲骨をグリグリ。
小学3年で肩こりという言葉を知ったときには「ああ、これは肩こりという現象だったのか」とスッキリしたほど。
今ではすっかり整骨院でモミモミバキバキしてもらわないとLINEポコポコの記録に影響が出る体になってしまった。

僕が通っている整骨院は3週間来院が無いと「お体の調子はいかがでしょうか?」というお手紙が来るようになっていて、
そんな手紙に誘われて約一ヶ月ぶりに整骨院に来院した。
施術が始まると整体師の先生の指がいつもより0.5関節分深く僕の体にめり込んで来た。
いつもの数倍気持ちいい。
僕は顔に掛けられたタオルの下でたびたび白眼をむきながら快楽の波に身を委ねた。
終わってみると驚くほど体が軽くなった。

これはどういうことか?
考えられる事は2つ
①一ヶ月ぶりだから疲れが溜まっていて気持ちよく感じた
②客が離れかけていると感じた整体師が本気を出した

①の場合、施術期間が空けば空くほど気持ち良さが増大する事になるわけで1番気持ちいいのは初めて整骨院に行った時ということになる。なんせ30年分のコリが溜まっているわけだから、昇天失神レベルの快感に襲われるはずだ。しかし初診時に松戸市内に僕の「はぬ~~ん!」という声が響き渡ったという記録は残っていない。
となるとこの気持ち良さの正体は②ということになる。
僕を逃したくない整体師さんが必死で「うちの施術こんだけ気持ちいいんだからまた前みたいに通ってね~」とサービスしてくれたというわけだ。
これでノコノコと前のようにハイペースで通い始めてしまっては向こうの「思うツボ」だ。
ここで「整骨院だけに(笑)」と付け足すのを我慢するために左足の爪を剥いだ事を白状しておく。

さてそんな「思うツボ」にならないためにはどうしたらいいか?
頻繁に通いつつ毎回本気を出してもらうには
この「もしかしたらうちの店来なくなっちゃうかも」という思いを利用してみよう。

診察券を出すときにはわざと財布をぶちまけ、ライバル整骨院の診察券を見せつけ嫉妬心を煽る。
施術が始まると他の整体師につけられた首筋の指圧跡を見せつけ、さらに心を揺さぶる。
バンからマッサージチェアの最大手フジ医療器のカタログをチラ見せするなどファッション面にも気を配る。

これらの小悪魔テクニックで整体師はきっと「骨抜き」になることだろう。
今度は右足の爪だ。