つまりはミスチル

去年の9月に小沢健二SEKAI NO OWARIのコラボ曲が発売された。

小沢健二にとってはスチャダラパーとの「今夜はブギー・バック」以来23年ぶりのコラボで、復活第一弾シングルの制作にもセカオワは深く関わっているという。

この二組を繫げたのが共通の知り合いであるファンタジスタさくらだ(あやまんJAPAN)だというのだ。

これってすごくない?って話。

 

ファンタジスタさくらだセカオワのメンバーの小学校の同級生で、あやまんJAPANとして活躍し、スチャダラパーBoseと結婚。セカオワのメンバーがニューヨークに行った際に小沢健二に会ってみたいと思い、Boseの嫁であるファンタジスタさくらだ経由で連絡をとったのだという。

 

あやまんJAPANがブレイクしていなければファンタジスタさくらだboseは出会うことなくセカオワオザケンと出会うこともなくオザケンの新曲が発売されることもなかったのだ。(別の形でセカオワと出会っていた可能性はあるけども)

 

あやまんJAPANがブレイクした2010年当時誰がこんなことを予想できたであろうか。

 

あやまんJAPANをブレイクに導いた人、つまりあやまんJAPANと合コンをした全ての人がオザケンの新曲に関わっているのだ。

 

2009年

歌手を目指しながらカラオケ店でアルバイトをする青年。

インターホンでドリンクの注文が入るとため息が漏れた。

「あの部屋か・・・」

大部屋である101は毎週末、「監督」と名乗る女性の団体によっておさえられており、彼女達は毎週別の男たちと合コンを開いては卑猥なコールで場を盛り上げていた。

それだけならいいのだが、彼女達はドリンクを持ってきた店員を卑猥なコールに巻き込むのだ。

ノックをし、ドアを開けるといつものようにコールの真っ最中。

ただ、その日がいつもと違ったのは歌われているのが青年が歌手を目指すきっかけとなった小沢健二の曲だということ。

青年がドリンクをテーブルに並べていると彼女達の中の一人(やたら胸を強調した服を着ている)が彼の上にまたがり、「カローラⅡにのって」に合わせて「車に乗ってなにするの?」「ひと気の少ないパーキング」「リクライニングのレバーをにぎって」「ぽいぽいぽいぽ ぽいぽいぽぴー」とコールを始めた。

自分の憧れの人が弄ばれている感覚、そして何もできない自分の現状に苛立ち、青年は下唇を噛み締めた。

すると青年の表情の変化に気づいた監督が合図を出し、彼にまたがっていた女はすぐさまコールを止めた。そして彼の目をしっかりと見て「本当にごめんなさい。お仕事がんばってください」と言うと、男たちの方へ戻っていった。

青年がフロントに戻る頃には101号室はいつもの賑やかさを取り戻していた。

タンバリンを除菌タオルで拭きながら青年はつぶやいた。

「おっぱいおっきかったなあ」

 

 

みたいな人がいるとするじゃない!?

実際いなくても似たような人はいたと思うのよ!

そんな人もオザケンの新曲を生み出すきっかけになってて

 

風が吹けば桶屋が儲かる

蝶が羽ばたけば遠くで竜巻起こるし

逆鱗がレコーディングすれば世界は救われるし

青年が毎日ドリンク運べばオザケンが新曲を出す

 

ってこと。

 

つまりは

 

僕のした単純作業が この世界を回り回ってまだ出会ったこともない人の笑い声を作ってゆく

 

ってことが立証されたのだ。

トラウマ詰め将棋

「これって僕だけですかねえ」

「私って変なのかなあ」

みたいなこという人には

「全然そんなことないですよ。1学年に20人くらいの割合でそういう人いると思います」

と具体的な数字を出して答えるようにしている

あなたが世界で一人だけの個性を持った人なわけがないと伝えたいのだ

世界で一人だけの個性を持った人がいるとしたら「私って変なのかなあ」なんて事は気にもしないはずだし

世界で一人だけの個性を持った人はこんなスーパーのレジ打ちのバイトはしていない

もちろん僕にも世界で一人だけの個性なんて1つもなくて

これから話すことも10人中3人くらいはそうだろうと思って話す

 

過去にあった理不尽な事を思い出して

「あのときこう言っておけば良かった」

「そしたら相手がこう言うから・・・」

「今度はこう言い返して・・・」

と記憶の中の嫌な奴と口喧嘩して

自分が勝つまでシミュレーションしてしまうことってありますよね?

僕はこれをトラウマ詰め将棋と呼んでいて

電車に乗っている時などにこれが始まってしまうと

降りる駅を通りすぎてしまうほど入り込んでしまう

 

僕のトラウマ詰め将棋によく登場するのは

7年前にいった映画館の3Dメガネを手渡すおばさんだ

僕が3Dメガネを受け取ろうとするとレンズ部分に手が触れかけているのがきになったらしく

さっと手を持ち上げ僕からメガネを取り上げた

そして目も合わせずに「触らないで」

というのだ

ちょっとしたことだけどすごく気分が悪くて映画の前半が楽しめなかったのを覚えている

 

そのおばさんと僕は頭の中で7年間戦い続けている

 

そしてやっかいなのは口喧嘩中のおばさんのセリフも僕が考えているため

弁論力が互角なのだ

うまいこと言い返されて負けてしまうことすらある

 

そしてまた降りる駅を通りすぎている

 

何をやっているんだ

おばさんはもうそんなこと全く覚えていないのに

 

それなのに生きていると理不尽な経験も増えていき年間一人くらいは詰め将棋の新キャラが登場する

 

すると詰め将棋にかける時間も長くなり乗り過ごすのが1駅じゃ済まなくなってくる

 

このままでは良くない

僕はおばさんを許してみることにした

 

目を閉じて

7年前のあの景色を思い出す

ポップコーンの匂い

青い照明

ふかふかの床

そして僕はおばさんのもとに行き

3Dメガネを受け取る前に

おばさんを力強く抱きしめた

おばさんは満面の笑みで

光を放ちながら消滅していく

 

そんなイメージを頭に植えつけたのだ

何度も反芻するうちに実際にあったことかのように思えてきて

トラウマ詰め将棋におばさんが出てくることは減っていった

 

僕には消滅させなきゃいけない相手があと20人はいる

 

あと3人許すのが2018年の目標だ

カラーテレビに存在する白黒問題

子供の頃、たぶん僕が小学生くらいの頃。

我が家はテレビの買い替えを検討していた。

 

27インチから29インチへのステップアップだ。

家電好きの父は各社のカタログをもらってきて、母にプレゼンを行った。

父の第一候補は最新型の白いテレビ。

それまで黒のテレビを愛用してきた我が家にとっては大きな挑戦である。

果たしてテレビのフチが白くて画面の邪魔にならないのだろうか?

保守派の母は黒いテレビを推したが、父の心は白いテレビの虜になっていた。

 

平行線の議論が続いていたある日、僕が目を覚ましてリビングにいくと、テレビが真っ白になっていた。

 

父が強行採決に踏み切ったかと思ったがそうではなく、

これまで使っていたテレビに白い紙(チラシと裏側)が貼られていたのだ。

これで気にならなかったら白いテレビ、

ダメだったら黒いテレビということらしい。

 

なにその決め方、ちょーかわいくない?

 

当時40歳くらいの両親が二人でセロテープを輪っかにしてチラシをペタペタ貼っているところを想像するとたまらなくかわいい。

目の付け所が全然シャープじゃない。

ティッシュの箱で、小物入れをよく作っていた母の発案だろう。

ダサさは愛なのだ。

 

そんな世界のカド山モデルにも1週間ほどで慣れ、白いテレビの購入が決定した。

やってきたテレビは確かに白かったが、チラシの真っ白に慣れてしまった僕達は物足りなさを感じたのだった。

 

そんな日の事を思い出した。

 

なぜ思い出したかというと、僕が使わなくなってあげた黒いiPhone4に父が、白いフチの液晶保護シールを張っているのを見つけたからだ。

ヤツはまだあの白さを諦めていない。

自分は本当にクリスチャンではないと言い切れるか?

三年前、下北沢のファーストキッチンで漫才の台本を書いていると、女子中学生2人組が僕の方を見ながらヒソヒソ話をし始めた。

 

「絶対そうだよ」

「え、でも違ったら恥ずかしいじゃん」

「間違いないって、話しかけようよ」

「でも違うかもしんないじゃん」

 

ついに来たと思った。

今日をもって私は芸能人となるのだと思った。

同期の仲間たちの顔が浮かぶ。

「ごめんな。一足先に行かせてもらうわ」

そんなことを考えてるのがバレないよう平静を装ってその時を待った。

 

「絶対そうだってば!」

「えー、違うかもしんないじゃん」

おさげの子が話しかけようとするのを

ショートカットの子が止めている。

 

ショートちゃん、止めなくていいんだよ

僕はエーデルワイス門田だよ

本人だよ

 

そんなやりとりに全く気づいてない相方は

「そろそろライブだからいこうか」

といって、上着を手にとった。

 

バカ野郎。

あの瞬間がもう目の前に来ているんだぞ。

芸能人になるための通過儀礼である「顔をさされる」の瞬間が。

 

あ、そういえばコイツ、前にテレビに出た時にバイトしてる牛丼屋で常連のキャバ嬢から「テレビでてたっしょ、ウケんね」と言われたことがあるんだった。

 

まさか、それをワンカウントとしてるのか?

もう通過儀礼をクリアした気になってるのか?

まだ顔をさされたことのない俺を見下してきたのか?

だからネタ考えないくせに壁側の背もたれフカフカの方のイスに座っているのか?

 

おい、ひょっとしておさげちゃんとショートちゃんの会話も聞こえてるのか!?

だから、これまで見下してきた俺が自分と同じ立場になるのを阻止しようとしてるのか!?

 

てめぇ、潰す!!!

 

怒りのあまり、以前占い師に洗脳されてしまった友達を説得しようとした僕に、その占い師が放った言葉が出てしまった。

 

きょとんとしている相方に僕は

「あとちょっとでいいネタ出そうなんだよね、だからもうちょっと書いてくわ」

と少し大きめの声で言った。

これはこちらを見ている二人に

”ちゃんと芸人だよ”

”君たちの思っている人であってるよ”

と伝えるという狙いもある。

華麗なるダブルミーニング

つくづく自分の才能が怖い。

 

才能=タレント

どうもタレントです

 

そんなタレントの優しい配慮に背中を押されたのか、おさげちゃんが意を決してこちらに近づいてきた。さっきまで不安な顔をしていたショートちゃんも期待に目を輝かせておさげちゃんを見つめている。

 

時は満ちた

 

僕が「そうだよ エーデルワイスだよ」と言うために口を「そ」の形にして待っているとおさげちゃんが僕の前まで来て言った。

 

「あの、、クリスチャンですか?」

 

予想外過ぎて、おさげちゃんの発した言葉はマンガの宇宙人のように全てカタカナで聞こえ、頭の中で全く文章にならなかった。

 

結果的にはほとんどカタカナで合ってたわけだけど。

 

「そ」の口で待っていた僕は「違います」と言うことができす「そう見えます?」という変な答え方をしてしまった。

謎のクリスチャン焦らし。

 

「だって、さっきからお祈りしてるから」

 

どうやら、組んだ手にアゴを乗せて、ぶつぶつと漫才のセリフを反復していた様子がお祈りをしているかのように見えたらしい。

 

「違うんだ。実は漫才の台本を書いててね」

 

僕は作戦を切り替えた。

今からでも僕がエーデルワイスという漫才師だということを知ってもらえば

エーデルワイスという漫才師を知っている

ファーストキッチンで声をかけた

という「顔さされ」を構成する二大要素が満たされるのだ。

大切なのは順番なんかではないということは数々のできちゃった婚夫婦が証明してくれている。

 

しかし、おさげちゃんは「違うんだ。まんざ・・・」くらいで「失礼しました!」と頭を下げて去っていった。

 

取り残された僕に相方は「クリスチャンなん?」と半笑いで語りかけてきた。

 

 

確かに神にすがりたい気分だ。

小悪魔の肩甲骨

整骨院に通っている。
猫背な僕は子供の頃から肩こりがひどく、小学2年生になる頃には教室のイスの背もたれで肩甲骨をグリグリ。
小学3年で肩こりという言葉を知ったときには「ああ、これは肩こりという現象だったのか」とスッキリしたほど。
今ではすっかり整骨院でモミモミバキバキしてもらわないとLINEポコポコの記録に影響が出る体になってしまった。

僕が通っている整骨院は3週間来院が無いと「お体の調子はいかがでしょうか?」というお手紙が来るようになっていて、
そんな手紙に誘われて約一ヶ月ぶりに整骨院に来院した。
施術が始まると整体師の先生の指がいつもより0.5関節分深く僕の体にめり込んで来た。
いつもの数倍気持ちいい。
僕は顔に掛けられたタオルの下でたびたび白眼をむきながら快楽の波に身を委ねた。
終わってみると驚くほど体が軽くなった。

これはどういうことか?
考えられる事は2つ
①一ヶ月ぶりだから疲れが溜まっていて気持ちよく感じた
②客が離れかけていると感じた整体師が本気を出した

①の場合、施術期間が空けば空くほど気持ち良さが増大する事になるわけで1番気持ちいいのは初めて整骨院に行った時ということになる。なんせ30年分のコリが溜まっているわけだから、昇天失神レベルの快感に襲われるはずだ。しかし初診時に松戸市内に僕の「はぬ~~ん!」という声が響き渡ったという記録は残っていない。
となるとこの気持ち良さの正体は②ということになる。
僕を逃したくない整体師さんが必死で「うちの施術こんだけ気持ちいいんだからまた前みたいに通ってね~」とサービスしてくれたというわけだ。
これでノコノコと前のようにハイペースで通い始めてしまっては向こうの「思うツボ」だ。
ここで「整骨院だけに(笑)」と付け足すのを我慢するために左足の爪を剥いだ事を白状しておく。

さてそんな「思うツボ」にならないためにはどうしたらいいか?
頻繁に通いつつ毎回本気を出してもらうには
この「もしかしたらうちの店来なくなっちゃうかも」という思いを利用してみよう。

診察券を出すときにはわざと財布をぶちまけ、ライバル整骨院の診察券を見せつけ嫉妬心を煽る。
施術が始まると他の整体師につけられた首筋の指圧跡を見せつけ、さらに心を揺さぶる。
バンからマッサージチェアの最大手フジ医療器のカタログをチラ見せするなどファッション面にも気を配る。

これらの小悪魔テクニックで整体師はきっと「骨抜き」になることだろう。
今度は右足の爪だ。

ストロングタイムの無い世界

バーゲンのときのアパレル店員さんや
やたら威勢の良いラーメン屋さんなど
「いらっしゃいませー!」を繰り返してるうちに
飽きてきてorトランス状態に入り
「らっしゃーせーーーい」

「るあっしゃーそーーーーん」
など言い方で遊び出し、それを回りの店員がクスクス笑い、誰が一番ひねった言い方ができるかみたいなノリが始まることがある。

「えー?そんなのみたことないよ?」
という方は速やかにあいのり桃ちゃんのブログにお戻りください。

ある。僕は何度も目にしたし、電気屋さんでアルバイトをしていたときは自分もやっていた。

僕はあれが大嫌いだ。
いらっしゃいませ感が無いばかりか、バカにされているような気分になる。
小学生の頃、日曜日に学校の前を通ると少年野球の練習試合が行われていて、飛び交うヤジの憎たらしさや品の無さに胸焼けした。
あのヤジを思い出させる。

ではあれを無くすにはどうしたらいいか。
あれを行っている彼らはそれを注意されたことがないのだろう。
あの現象に名前が無いからだ。
つまり名前さえつけてしまえばあの現象はこの世に姿を現し、注意することができるのだ。
仮にあの現象を「ストロングタイム」と名付けたとする。

すると店長は朝礼で
「えー、昨日の夕方頃、フロアのスタッフの何名かがストロングタイムに入ってました。当事者にはその場で注意しましたが、昨日入っていないスタッフやその場にいなかったスタッフの皆さんも、ST防止をもう一度徹底するようお願いします」
と言えるわけで
食べログにも
「名産の煮干しの良さを出しきり、地元愛をラーメンに落とし込もうという店主の気迫が感じられる一杯。ただ一点、カウンターの店員が少々ST気味だったのが残念」
と書けるわけで

次第にこの現象が起こりにくくなっていくんじゃないだろうか。